自由粒子のラグランジアン


古典力学の場合

古典力学では、物体の運動は数空間3\mathbb{R}^3における時間ttでパラメトライズされた曲線c(t)c(t)で表現される。

問題は、自由粒子の運動を決定することである。

ラグランジュ形式においては、自由粒子の運動の全情報を持つスカラー関数LLが存在すると仮定する。LLは一般に位置xx、速度uu、時間ttの関数であると考える。これをラグランジアンと呼ぶ。

ラグランジアンLLを運動の始まりから終わりまで積分したものを作用積分と呼ぶ。

世界線は確かに運動の全ての情報を保持しているが、世界線の一点に注目すると、運動を決定するのに十分な情報はない。

ラグランジアンの最も一般的な定義は、運動を決定する全ての情報の組に対して、スカラー値を与える写像ということ。

ラグランジアンは位置と速度の関数であるから、相対論の場合時空MMに対してTMTM上で定義された関数と考えるのが適切である。しかし考えてみると、時空MMにおける世界線は粒子の運動のあらゆる情報を保持しているはずである。これが古典力学の場合の運動の軌跡との違いである。古典力学の場合は運動の軌跡が分かっても、それをどれだけの速さでなぞったのか不明なので、速度ベクトルの情報が追加で必要であった。しかし時空MMの世界線の場合は、空間内での位置に加えて時間も含まれているので、ここに速度ベクトルの情報を追加する必要はないように思われる。

確かに、世界線は運動の全ての情報を保持しているが、世界線の一点に注目すると、運動を決定するのに十分な情報はない。ある時刻に、空間のどこにいたのかしか分からない。運動が決定されるためには、その点から次にどこへ移るのかという情報が必要であると。ラグランジアンの最も一般的な定義は、運動を決定する全ての情報の組に対して、スカラー値を与える写像ということだと考えると分かりやすい。

TMTMの任意の曲線を考える。ただし任意と言っても、それが時空上に実現する世界線(つまりTMTMからMMへの射影をしたもの)について、そこから得られる接ベクトルがTMTMで整合的でなければならない。曲線の各点で運動を決定する情報が与えられているので、ラグランジアンLLは各点でスカラー値を与えることが出来る。曲線が適当なパラメータでパラメトライズされているとすれば、これは一つの実数値関数を与える。したがって、その積分を計算することが出来る。こうして得られるのが作用積分である。

ラグランジアンLLの具体的な形を自由粒子の場合に決定するのが目標。LLは時空内の点とそこでの接ベクトルに対して実数を与える関数である。発見法的な議論を行うために、具体的に、成分表示で考える必要がある。そこで慣性座標系を導入する。すると、この座標系においてLLは8変数関数として表現される。曲線TMTMのパラメトライズの方法に物理的内容は無いので、LLは1次同次関数でなければならない。考えているのが自由粒子であるから、LLは座標に依存してはならない。したがってLLは接ベクトルのみに依存する4変数関数であることまで分かる。

LLの1次同次性と空間の等方性を加味すれば、LLは通常の意味での速さvvのみの関数ϕ\phiと、u0u_0とに分割できる。

ここでさらに、LLの関数系はローレンツ変換群で不変であると仮定することで、ϕ\phiが決定される。ここでは座標変換GGが受動的に作用すると解釈している。この場合、GGは単なる座標変換であって、世界線自体は変化せず、その座標系表示が変わるということになる。この時、LLGG不変性は何を意味するのかを考える必要がある。LLGG不変であるということは、座標変換の前後でLLの関数形が変わらないことを意味する。LLTMTMの点に対して与える実数値が変わらないのは当たり前だが、ここでの主張は関数形が変わらないということ。

ただしローレンツ変換群で不変であるというのが物理的に妥当な仮定かは考える必要がある。これは特殊相対性原理が成立するための十分条件である。実際、LLの関数形がローレンツ変換群で不変であれば、二つの慣性系におけるEL方程式は同形となる。EL方程式、つまり自由粒子の世界線が満たすべき方程式が慣性系によって異なるのは、特殊相対性原理に反する。


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最終更新: 2026-08-17